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東京高等裁判所 平成10年(行ケ)162号 判決 1998年12月10日

アメリカ合衆国

10017-3798 ニューヨーク州 ニューヨーク マディソン・アベニュ350

原告

アドバンス・マガジン・パブリッシャーズ・インコーポレーテッド

代表者

エリック・シー・アンダーソン

訴訟代理人弁理士

島田義勝

水谷安男

大阪府吹田市垂水町3丁目33番5号

被告

株式会社トップメルシー

代表者代表取締役

八田幸男

訴訟代理人弁理士

西教圭一郎

杉山毅至

主文

特許庁が平成6年審判第1763号事件について平成10年1月14日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

主文第1項と同旨の判決

2  被告

請求棄却の判決

第2  事案の概要

1  特許庁における手続の経緯

被告は、指定商品を商標法施行令(平成3年政令第299号による改正前のもの)に定める商品区分第17類「被服、その他本類に属する商品」とし、「MEIVOGUE」の欧文字と「メイボーグ」の仮名文字とを二段に横書きして成る登録第2108307号商標(昭和61年2月27日商標登録出願、平成1年1月23日設定登録。本件商標)の商標権者である。

原告は、平成6年1月21日、被告を被請求人として、本件商標につき、商標法4条1項15号及び8条1項に違反することを理由として商標登録無効審判の請求をし、平成6年審判第1763号事件として審理されたが、平成10年1月14日、出訴期間として90日が付加された上、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は同年2月4日原告に送達された。

2  審決の理由の要点

2-1 引用商標

原告(請求人)が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第655209号商標(引用商標1)は、「VOGUE」の文字より成り、昭和36年10月23日に登録出願、第26類「印刷物、ただし、この商標が特定の著作物の表題(題号)として使用される場合を除く」を指定商品として同39年10月9日に設定登録、その後、同50年8月1日、同59年9月17日及び平成6年9月29日の3回商標権存続期問の更新登録がされ、現に有効に存続している。同じく原告引用の登録第2525108号商標(引用商標2)は、「VOGUE」の文字より成り、昭和53年6月16日に登録出願、第17類「被服(但し、洋服、コートを除く)布製身回品、寝具類」を指定商品として平成5年4月28日に設定登録がされている。

2-2 審判における原告の主張

原告は、本件商標登録が無効とされるべき理由を次のように述べ、証拠方法として審判甲第1号証ないし第32号証(枝番を含む。)を提出した。

(1)  本件商標は、世界的に著名なファッション誌の題号である著名商標の引用商標1との関係において商品の出所の混同を生ずるおそれがあるから、商標法4条1項15号に該当する。また、本件商標は先願に係る引用商標2に類似するから、同法8条1項に該当する。その根拠は以下のとおりである。

(2)  「VOGUE」商標は、世界有数のファッション誌として広く認識されている「VOGUE」誌の題号として、長年にわたり継続して使用されている。「VOGUE」誌は、本年で創刊100周年を迎える極めて古い歴史と伝統を有する希有の雑誌であり、世界的名声と権威を有するファッション誌である。

(3)  本件商標は、その構成中に「VOGUE」及び「ボーグ」の文字を含むものであるから、「VOGUE」商標の著名性に照らせば、本件商標から著名商標「VOGUE」と同一の称呼が生じる。

(4)  両商標の指定商品を対比してみると、本件商標に係る指定商品は「被服、その他本類に属する商品」であるのに対して、著名商標「VOGUE」は「印刷物、ただし、この商標が特定の著作物の表題(題号)として使用される場合を除く」であって、「服飾雑誌」について使用することによって著名性を獲得したものである。

そして、本件商標の指定商品は服飾品そのものであって、服飾雑誌「VOGUE」の主要な掲載商品である。すなわち、本件商標の指定商品と服飾雑誌「VOGUE」とは極めて密接な関係を有しており、それぞれの購買層も共通するから、本件商標に係る需要者は「VOGUE」商標の著名性を十分に熟知している。

(5)  してみれば、「ボーグ」の文字を含む本件商標をその指定商品に使用した場合、それに接する取引者及び需要者は、「ボーグ」の文字に着目し、該商品があたかも原告又はこれと何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。

したがって、本件商標は商標法4条1項15号に該当する。

(6)  本件商標は原告が商標権者である引用商標2の後願であるにもかかわらず、先に登録されている。本件商標は「MEIVOGUE」と「メイボーグ」の文字より成り、その構成中に著名商標「VOGUE」の文字を含む。よって、取引者及び需要者の目は「VOGUE」の部分に集中し、本件商標からは「メイボーグ」の称呼の外に「ボーグ」又は「ヴォーグ」の称呼も生ずる。これに対し、引用商標2は「VOGUE」の文字から成るから、引用商標2からも「ヴォーグ」の称呼が生ずる。すなわち、本件商標と引用商標2とは、ともに「ボーグ」又は「ヴォーグ」なる共通の称呼を生ずるから、両商標は称呼の点において類似する。

両商標の指定商品は相抵触する商品を含む。

したがって、本件商標は商標法8条1項の規定に該当する。

2-3 審判における被告の主張

被告(被請求人)は次のとおり原告の主張を争い、審判乙第1ないし第4号証を提出した。

(1)  本件商標は、「MEIVOGUE/メイボーグ」と一体不可分に構成されており、「MEI/メイ」と「VOGUE/ボーグ」との部分に分離する必然性は存在せず、外観上まとまりよく一体的に構成されており、これより生ずると認められる「メイボーグ」の称呼も格段冗長というべきものでなく、4音という比較的少ない音数から構成されており、かつ全体としてよどみなく滑らかに発音できる。

したがって、本件商標は「メイボーグ」と一連にのみ称呼し得るものであり、ほかに構成中の「MEI/メイ」と「VOGUE/ボーグ」との文字部分を分離して認識し、かつ、「VOGUE/ボーグ」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見いだせない。すなわち、本件商標は、その構成文字に相応して、「メイボーグ」の称呼のみを生じ、「メイ」や「ボーグ」などの独立の称呼を生ずることはない。

引用商標1は、「特定の著作物の表題(題号)として使用される場合を除く印刷物」を指定商品に登録が認められた商標であり、本件商標とは、その指定商品も異なっている。原告の主張するように、商品「被服」との関連性も一概には否定できないにしても、本件商標の、前述のような構成態様からも明らかなように、「VOGUE」の部分のみを特別抽出する格段の理由とはいい難く、本件商標を、その指定商品について使用しても、これを理由に出所の混同を生ずるおそれはない。

したがって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当しない。

(2)  次に、本件商標と引用商標2との類否について考察すると、本件商標は、外観的には、「MEIVOGUE」の欧文字が同一字体、同一字形、同一の大きさの文字で一連に表されており、「メイボーグ」の片仮名文字は各文字が同一字体、同一字形、同一の大きさ、かつ全く同一の間隔をおいて一連に表されている。

また、本件商標のように、欧文字とその自然的称呼である振り仮名とを併記している場合には、原則的にこの振り仮名の称呼のみを生じ、ほかの不自然な称呼は生じないと考えるべきである。したがって、本件商標は、片仮名文字部分である「メイボーグ」の称呼のみを生じ、「メイ・ボーグ」のように途中で不自然に区切ったり、ましてや「ボーグ」の部分のみを特別抽出して「ボーグ」の称呼を生じるとは到底考えられない。

仮に、本件商標を「MEI/メイ」と「VOGUE/ボーグ」とに分離観察したとしても、「VOGUE」の有する意味は、元来「流行」「はやり」「人気」等の意の英語、仏語であって、いわゆるファッション業界では、誰もが使用して然るべきものであって、「VOGUE/ボーグ」の文字部分にのみ特別に注目する理由はなく、仮に「VOGUE誌」が著名なファッション雑誌であったとしても、原告のいう「取引者及び需要者の目は「VOGUE」の部分に集中する」という主張は受け入れ難い。

上述したとおり、本件商標は「ボーグ」のみの称呼を生じ得ないので、引用商標2と称呼の点において類似するとはいい得ない。また、外観及び観念の点においても、本件商標と引用商標2とは類似しないことは明らかである。

したがって、本件商標は、商標法8条1項の規定には該当しない。

2-4 審決の判断

(1)  商標法4条1項15号違反の有無の判断

本件商標は「MEIVOGUE」の欧文字と「メイボーグ」の片仮名文字とを上下二段に横書きして成り、下段の「メイボーグ」は、上段の「MEIVOGUE」の読みを特定する役目を果たしているといえるところ、「メイボーグ」及び「MEIVOGUE」を構成する各文字が、同書・同大・等間隔に表示されており、また、「メイボーグ」の称呼も長音を加えて5音であってこれを称呼しても格別冗長なものではなく、一連に称呼してもよどみなく一気に称呼し得るものであり、不自然なところはない。したがって、本件商標は、全体の構成にしても比較的短いものであり、その称呼自体も比較的簡潔なものであるから、これに接する取引者、需要者は、欧文字の「MEIVOGUE」を全体で一語を形成する一体のものと把握・認識し、全体から「メイボーグ」と称呼するのが自然であると認められる。

原告は、ファッション雑誌「VOGUE」誌の題号として「VOGUE」商標は著名であり、本件商標は構成中に「VOGUE」及び「ボーグ」の文字を含むものであるがら、本件商標は商品の出所について混同を生じさせるおそれがある旨主張する。

確かに、本件審判の請求の理由及び審判甲各号証を総合すれば、ファッション雑誌の「VOGUE」誌は、フランス、アメリカ、ドイツ等世界各国で発売されている雑誌であって、わが国においては、昭和28年ころから英語版及びフランス語版が発売され、本件商標の登録出願時には既に、その主たる掲載商品である婦人服飾関係の専門家、あるいは、婦人服飾関係に強い関心を持つ者の問において広く知られていたものと認められる。したがって、わが国において「VOGUE」の文字から成る商標は、本件商標の出願時には、人的な範囲においてかなり限定されたものではあるが、ファッション雑誌の題号として著名性を獲得し現在に至っているということができる(例えば審判甲第14号証、第17号証、第29号証、あるいは、東京高等裁判所平成9年7月24日言渡し平成8年(行ケ)第302号判決参照)。

しかしながら、上記「VOGUE」商標の著名性を併せ考えても、「MEIVOGUE」の文字構成には一語とみて不自然な点はなく、ほかにこれを「MEI」と「VOGUE」とに分離して観察すべき特段の事情を認めることはできないから、原告の上記主張は採用できない。

したがって、本件商標をその指定商品に使用しても、取引者、需要者が、これを原告又は原告と何らかの関係を有する者の取扱いに係るものと認識するとは判断し得ないから、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当であり、結局、商標法4条1項15号に違反して登録がなされたものということはできない。

(2)  商標法8条1項違反の有無の判断

本件商標と引用商標2とは、それぞれの文字構成前記のとおりであるから、外観上見誤るおそれのないものであることは明らかであり、また、本件商標からは「メイボーグ」の称呼のみを生ずるのに対し、引用商標は「ヴォーグ」の称呼を生ずるものであって、両称呼は「メイ」の音の有無という音構成において明確な差異を有するものであり、両商標は称呼上においても相紛れるおそれのないものといわなければならない。さらに、本件商標は特定の観念を生ずるものではないから、観念上においては比較し得ないものである。

してみれば、本件商標と引用商標2とは、外観、称呼、観念のいずれの点においても相紛れるおそれはなく、これらを総合しても類似するものということはできないがら、本件商標は商標法8条1項の規定に違反して登録がなされたものということもできない。

(3)  審決の結論

したがって、本件商標は、商標法4条1項15号及び同法8条1項の規定のいずれにも違反して登録がなされたものということはできない。

第3  当事者の主張

1  原告主張の審決の取消事由

(1)  審決摘示の当事者双方の主張があったことは認める。

(2)  しかしながら、審決は、引用商標1の著名性にもかかわらず、本件商標に接する取引者、需要者は欧文字の「MEIVOGUE」を全体で一語を形成する一体のものと把握・認識し、全体から「メイボーグ」と称呼するのが自然であると認められると誤って判断したため、商標法4条1項15号該当性の判断を誤った。

また、審決は、本件商標と引用商標2とは、外観、称呼、観念のいずれの点においても相紛れるおそれはなく、これらを総合しても類似するものということはできないと誤って判断したため、商標法8条1項該当性の判断を誤った。

すなわち、「VOGUE」商標は、本件商標の指定商品である「被服」に代表される服飾品の分野、あるいはファッショシ関連商品の分野において、強い識別力を有するものである。審決も認定するように「VOGUE」が極めて著名であるという事実からすれば、本件商標は著名性のある部分と著名性のない部分とに分離され、本件商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「VOGUE」又は「ボーグ」の部分に注意を強く惹かれることが多いとみるのが相当である。とりわけ、本件商標の「MEI」または「メイ」は造語で、意味のない言葉であってほとんど親しまれていないから、著名性のある「VOGUE」又は「ボーグ」に注意を惹かれ、その結果、本件商標は、著名商標である引用各商標「VOGUE」と外観、称呼、観念において相紛らわしく、したがって、商品の出所の混同を生じさせるおそれがあり、また、同一商品につき類似する商標といわなければならない。

したがって、審決は違法であり、取り消されるべきである。

2  取消事由に対する被告の主張

原告の取消事由は争う。本件商標につき出所の混同を生じるおそれはない。審決の認定、判断は正当であり、原告主張の誤りはない。

第4  当裁判所の判断

1  原告主張の取消事由のうち、まず、本件商標の商標法4条1項15号該当性について判断するに、引用商標1及びその著名性については、以下のように認められる。

(1)  甲第5号証、第6号証の1によれば、引用商標1は「VOGUE」の文字より成り、昭和36年10月23日、アメリカ法人のザ、コンド、ナスト、パブリケーションズ、インコーポレーテッド(後記(2)のとおり、後日原告に合併)により登録出願され、第26類「印刷物、ただし、この商標が特定の著作物の表題(題号)として使用される場合を除く」を指定商品として同39年10月9日に設定登録されたこと、その後、同50年8月1日、同59年9月17日及び平成6年9月29日の3回商標権存続期問の更新登録がされ、現に有効に存続していることが認められる。

(2)  甲第14号証の1、2、第49ないし第51号証及び弁論の全趣旨によれば、「VOGUE」誌は、1892年アメリカで創刊され、1909年からは、コンデ・ナスト社(ザ、コンド、ナスト、パブリケーションズ、インコーポレーテッド。次のとおり後日原告に合併)により、ファッション雑誌として発行されるようになり、本件商標の出願当時(昭和61年2月)において、アメリカ、フランス、イギリス等で出版され、世界各国で発売されており、古典的かつ世界的な権威を持ったファッション雑誌として、世界的に広く知られていること、原告は、昭和63年にコンデ・ナスト社を合併したが、「VOGUE」誌はその後も同様に発行されていることが認められる。

(3)  日本における引用商標1の著名性についてみるに、昭和20年代から昭和61年ころまでの間、以下のとおり、「VOGUE」(ヴォーグ)誌に関する解説、紹介記事、広告等が数多くの書籍、事典、新聞、雑誌等に記載されていることが認められる。

(a) 戦後の入荷の記事

昭和24年10月3日の朝日新聞に、「『ヴォーグ』入荷 世界的スタイル誌『ヴォーグ』が十年ぶりに一日入荷した。」と記載(甲第15号証の1、2)。

(b) 事典類の記載

昭和30年8月30日、平凡社発行の「世界大百科事典3」の「ヴォーグ」の項に、「Vogue 最も知られた流行服飾雑誌の名。」として20行にわたる解説(甲第16号証)。

昭和34年9月10日発行の「現代用語の基礎知識1959年版」のファッション・ブックの項に、「流行雑誌。外国の代表的なものとしては、「ヴォーグ」(Vogue米、仏、英版)……等々がある。」と記載。パターン・ブックの項に、「Vogue Pattern Book」がその代表的なものとして掲載。「外来語の小事典」の章の「ヴォーグ」(Vogue)の項に、「流行の意。この名前の有名な流行雑誌が出ている。」と記載(甲第17、第18号証)。

昭和45年8月25日、平凡社発行の「アポロ百科事典」に、「ボーグ Vogue フランスの服飾雑誌。」との記載のほか、アメリカ版、イギリス版にも触れた記載(甲第23号証)。

昭和46年3月15日、小学館発行の「大日本百科事典」のボーグの項に、「Vogue 婦人服飾流行雑誌。」との記載と、フランス版、アメリカ版、イギリス版の特色が記載。「いずれの版もファッション雑誌としては高水準のものを紹介していることでは一致している。」との記載(甲第24号証)。

昭和48年2月1日、平凡社発行の「小百科事典」の「ボーグ Vogue」の項に、「フランスの服飾雑誌。」との記載及びアメリカ版、イギリス版もある旨の記載(甲第25号証)。

昭和49年8月1日、集英社発行の「外国からきた新語辞典第3版」のボーグの項に、「アメリカのファッション雑誌名」との記載(甲第26号証)。

昭和55年1月1日発行の「現代用語の基礎知識1980」の「ボーグ(vogue)」の項に、「流行。服飾雑誌の名。」と記載(甲第36号証)。

昭和56年4月20日、平凡社発行の「世界大百科事典」の「ヴォーグ Vogue」の項に、「最も知られた流行服飾雑誌の名。」と記載。アメリカ版、フランス版、イギリス版についての説明も含めて23行にわたる解説の記載(甲第49号証)。

昭和56年7月16日、講談社発行の「写真大百科事典」の「80 VOGUE ヴォーグ」の欄に、「国際的なモード誌のひとつ」として「VOGUE」誌の歴史が詳細に記載(甲第50号証)。

昭和58年1月10日、小学館発行の「最新英語情報辞典」の「Vogue」の項に「米国の月刊ファッション誌」として解説が記載(甲第58号証)。

昭和58年5月25日、講談社発行の「大事典desk」の「ボーグ」の項に、「Vogue 服飾雑誌。ボーグは流行の意。1892年フランスで創刊。英米版もある。[特徴]豪華な多色刷りで婦人服の流行を紹介、婦人向けの一般記事もあるが、上流社会のものに限られる。」と記載(甲第56号証)。

昭和61年4月20日、名著普及会発行の「アメリカ州別文化事典」の「Vogue」の項に、創刊年、発行部数及び歴史が記載(甲第62号証)。

(c) 服飾関係の事典類の記載

昭和43年5月20日、婦人画報社発行の「服飾事典」(34版)に、「【ヴォーグ〔Vogue:フランス、アメリカ、イギリス〕】一般的に最も名の知られた流行雑誌。」(477頁)として解説が記載(甲第22号証)。

昭和48年4月25日発行の「田中千代 服飾事典(増補)」に、「なお『ヴォーグ』は、世界でもっとも名高いファッション・ブックの名前でもある。」(72頁)、「一般的に最も名の知られた流行雑誌。」(701頁)と記載(甲第35号証)。

昭和54年3月5日、文化出版局発行の「服飾辞典」に、ヴォーグ〔Vogue〕の項に、「『ヴォーグ』といえばファッション誌の代名詞になっているほど。」(42頁)と記載、また、「VOGUE Homme」、「「VOGUE Bambini」の紹介があり、各誌の表紙写真も掲載(甲第34号証)。

昭和55年10月5日初版発行の丹野郁編「総合服飾史事典」に、「『ヴォーグ(Vogue)』は流行雑誌として一般に知られている。」(397頁)とし、フランス版、米国版、英国版の特色が記載(甲第47号証)。

(d) 昭和42年の日本取材関係の記事

昭和42年10月6日の朝日新聞に、「京都の金閣寺で取材する『ヴォーグ』の一行」との表題の下、「世界的なハイファッション誌、フランスの『ボーグ』が……日本特集を企画。」との記載(甲第20号証の1、2)。

昭和42年10月21日の「週刊新潮」に、「服飾界最高権威が見た世界に通用する風景」との小タイトルの下、「『ボーグ』とは、いうまでもなく、ファッションの中心、パリで発行され、世界の流行を左右するといわれる服飾雑誌の権威。」との記載(甲第21号証)。

(e) 文献類の記載

昭和50年6月5日発行の南静著「パリ・モードの200年」に、「ヴォーグ」の編集者、モード画家等についての記載(甲第27号証)。

昭和55年11月28日発行の常盤新平ら編「アメリカ雑誌全カタログ」の「ヴォーグVogue」の欄(212ないし214頁)に、「高級なファッション雑誌」、「『ヴォーグ』が上流社会と芸術家に支えられた華やかな社交と風俗の歴史であったことも知った。」などと記載(甲第48号証)。

昭和56年12月5日発行の常盤新平著「彼女のアメリカ」に、「このゴシップなる優雅な生きもの」、「女の雑誌USA 作家も広告も超一流好み『ヴォーグ』」(19ないし35頁)との項目の下、「ヴォーグ」誌に関する随想等が記載(甲第51号証)。

昭和57年6月20日発行のアーネスティン・カーター著「ファッションの仕掛け人」に、「ヴォーグ」誌とその歴史を支える編集長の物語が記載(甲第54号証)。

昭和58年12月1日の雑誌「BRUTUS」に、「雑誌が時代を踊らせた日。」の表題の下、「コンデ・ナスト・サーカス団。」、「ヴォーグを創った野心家たち。」、「ヴォーグはファッションをアートにした。」、「ヴォーグに“時代”を吹き込んだ男。」についての記事(51ないし57頁)が掲載(甲第57号証)。

昭和60年11月20日発行の加賀山弘著「気になるアメリカ雑誌」に、「ソフィスティケーテッド・レディーズ」の伝統との表題の下に雑誌「ヴォーグ、VOGUE」の紹介記事が掲載(甲第61号証)。

(f) フランソワーズ・モー美容編集長の訪日関係の記事

昭和52年2月8日の雑誌「週刊女性」に、「『パリ・ヴォーグ』美容担当編集長フランソワーズ・モーさんに単独インタビュー」との特集記事が掲載(142ないし145頁)、「VOGUE」誌の表紙写真も「モード界の権威『パリ・ヴォーグ』表紙」として掲載(甲第31号証)。

昭和52年1月19日の読売新聞に、「『ボーグ』編集長F.モーさん」の欄で、フランスのファッション誌「ボーグ」がデザイナー芦田淳との対談において取り上げられた(甲第28号証の1、2)。

昭和52年1月20日の朝日新聞に、「パリ・ヴォーグ誌美容担当 モーさんのおしゃれ観」についての記事が掲載(甲第29号証の1、2)。

昭和52年4月1日、文化出版局発行の「ハイファッション」に、フレンチ・ヴォーグ誌美容編集長 フランソワーズ・モーのインタビュー記事(186頁)が掲載(甲第32号証)。

(g) 「ヴォーグ60年展」関係の記事

昭和55年3月1日の雑誌「芸術新潮」に、「特集 回想『ヴォーグ60年』池田満寿夫編・解説」の特集記事が掲載(甲第37号証)。

昭和55年3月6日の朝日新聞、読売新聞及び毎日新聞、同月14日の朝日新聞に「ヴォーグ60年展」の広告が掲載(甲第38ないし第40及び第44号証)。

同月7日の日本経済新聞に、「衣装や写真で見るファッションの流れ 英国版『ヴォーグ』60年展」に関する記事が掲載(甲第41号証の1、2)。

同月8日の読売新聞に、「ファッションの60年」と題して、「ヴォーグ60年展」の内容を紹介する記事が掲載(甲第42号証の1、2)。

同月13日の朝日新聞に、「ヴォーグ60年展」に関するインタビュー記事が掲載。その中で「発行部数250万。ファッション雑誌としてもっとも長い歴史と広い読者層をもつ『ヴォーグ』の写真と衣装展が開かれている」と記載(甲第43号証の1、2)。

昭和55年4月7日発行の「MODE et MODE No.195」に、ヴォーグ60年展についての記事が掲載。その記事の中で、「ファッション雑誌の中でも常に世界の最高峰として君臨し、ファッションをリードし続けている『ヴォーグ』。」(132頁)と記載(甲第46号証)。

昭和55年4月12日発行の雑誌「太陽」に、「日本語版 ヴォーグの60年」と題する本の広告が掲載(甲第45号証)。

(h) その他

昭和35年8月28日の雑誌「朝日ジャーナル」の写真集「ローマ」についての文中(22頁)で、写真家ウイリアム・クラインについて、「『ヴォーグ』のファッション写真に縦横の手腕を見せたりしている。」との記載(甲第19号証)。

昭和52年2月1日の雑誌「男子専科」に、ヴォーグのイタリア版「ルオモ・ヴォーグ」誌に関する記事が掲載(甲第30号証)。

昭和53年9月発行の「雑誌新聞総かたろぐ」に、「VOGUE アメリカ版」、「VOGUE フランス版」、「VOGUE HOMMES」及び「VOGUE PATTERNS」の各説明文が掲載(614頁)(甲第33号証)。

昭和57年3月8日の朝日新聞に、A.リーバーマン編「ヴォーグ・ブック・オブ・ファッション・フォトグラフィ」の紹介記事が掲載(甲第52号証の1、2)。

昭和59年11月23日の雑誌「FOCUS」に、著名なモデルが「有名な高級ファッション誌『ヴォーグ』の見開き……を飾ったこともある」と記載(甲第60号証)。

平成元年9月12日の日本経済新聞に、「『VOGUE』商標使用差し止め」との見出しの下、「世界的に有名なファッション雑誌『VOGUE』を発行している米・コンデ・ナスト・パブリケイションズ社」の請求が大阪地裁で認められたとの記事が掲載(甲第63号証)。

(4)  以上認定の事実並びに服飾関係者、書店出版関係者などが作成した証明書である甲第66号証の1ないし70を総合すると、本件商標の登録出願時である昭和61年2月27日はもちろん、その登録時である平成1年1月23日においても、引用商標1は、日本国内において、原告(当時は、原告が合併する前のコンデ・ナスト社)の発行する世界的に有名なファッション雑誌である「VOGUE」(「ヴォーグ」)誌の題号として、服飾関係のデザイナーはもちろん、ファッションに関連する商品の取引者、需要者間において広く知られていたものと認めることができ、これに反する証拠はない。

2  混同を生ずるおそれについては、以下のように認められる。

(1)  本件商標の一部を構成する「MEI」及び「メイ」が、日本語においてはもちろん、フランス語、英語などの外国語において意味を持つ単語として存在することを認めるべき証拠はなく、造語といわざるをえない(被告も、この点を覆すべき主張を審判及び本訴においてしていない。)。

(2)  前記認定のとおり、引用商標1は、日本国内において、世界的に有名なファッション雑誌である「VOGUE」(「ヴォーグ」)誌の題号として、ファッション関連商品の取引者、需要者の間において広く知られていたものであるところ、本件商標の指定商品は、前記説示のとおり、第17類「被服、その他本類に属する商品」であり、そのうち「被服」はファッションに関連する商品の典型ともいうべきものである。

他方、本件商標は「ボーグ」、「VOGUE」をその構成の一部とするものであり、欧文字「VOGUE」からは「ヴォーグ」の称呼も生じ、日本語の感覚からすれば「ボーグ」と「ヴォーグ」の称呼の区別はつけにくいところである。現に、前記認定のわが国における「VOGUE」誌の説明においても「ボーグ」と表記している例も多くみられる。

(3)  そして、「ヴォーグ」(「ボーグ」)、「VOGUE」は、前記のように、わが国において、本件商標の登録出願時である昭和61年2月27日までに、ファッション雑誌の題号としてファッションに関連する商品の取引者、需要者に広く知られていたのに対し、「MEI」及び「メイ」には何らかの意味があるとは認められないことからすると、ファッションに関連する商品である被服の取引者、需要者が長音を含め5音と比較的短い称呼の本件商標が付された被服製品に接すれば、引用商標1との構成上の相違にもかかわらず、「ボーグ」、「VOGUE」の部分に着目して、ファッション雑誌である「VOGUE」誌を連想し、上記被服製品が原告、又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかと、その出所について誤認混同するおそれがあるものと認めることができる。

3  以上によれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者、需要者が、これを原告又は原告と何らかの関係を有する者の取扱いに係るものと認識する可能性があり、商品の出所について誤認混同するおそれがあるというべきであるから、これと異なる認定の下に、「本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当であり、結局、商標法4条1項15号に違反して登録がなされたものということはできない」とした審決の判断は誤りである。

第5  結論

したがつて、本件商標の商標法8条1の該当性の有無についてした審決の判断の当否について検討するまでもなく、審決は違法として取り消されるべきである。よって、原告の本訴請求を認容することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(平成10年11月5日口頭弁論終結)

(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 市川正巳)

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